財務諸表の読み方

- 損益計算書では、営業利益に着目
- 貸借対照表では、利益剰余金に着目
- キャッシュ・フロー計算書では、フリー・キャッシュ・フローに着目
個別株投資の場合、企業ごとに株価がありますが、この株価の適正価格はどのように判断すればいいのでしょうか。
株式は企業の一部を所有することができる権利であることからすると、株価の源泉は、企業の本質的価値と考えられます。
そして、企業の本質的価値は将来性を含めて判断されますが、過去と現在の企業の健康状態を把握するためのツールとして「財務諸表」があります。
財務諸表は難解な数字の羅列に見えるかもしれませんが、その背後には企業の活動や財政状態が詳細に記載されています。
そこで、今回は財務諸表の読み方についてお話しします。
財務諸表とは、企業の経営成績や財政状態などを総合的に示す報告書のことであり、主に3つの書類(損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書)で構成されています。
損益計算書は、一定期間における企業の収益、費用、利益を示す「動的な」報告書です。
貸借対照表は、ある時点における企業の資産、負債、純資産の状態を示す「静的な」報告書です。
キャッシュ・フロー計算書は、一定期間における現金の流れ(収入と支出)を示す報告書です。
これらの書類を読み解くことで、企業の収益性、安定性、資金繰りの状況を把握することができます。
損益計算書では、企業の収益力と利益構造を把握することができます。
損益計算書は、一定期間(通常は1年間)における企業の経営成績を示します。
売上高から始まり、各種費用を差し引いて最終的な利益(当期純利益)を計算します。
主要な利益は5種類(売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期純利益)あります。
売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた利益であり、粗利とも呼ばれ、本業の収益力を示します。
売上高ー売上原価=売上総利益
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費(人件費、広告宣伝費、地代家賃など)を差し引いた利益であり、本業での稼ぐ力を示します。
売上総利益ー(販売費及び一般管理費)=営業利益
経常利益は、営業利益に営業外収益(受取利息など)を加え、営業外費用(支払利息など)を差し引いた利益であり、企業の通常の活動全体での収益力を示します。
営業利益+営業外収益ー営業外費用=経常利益
税引前当期純利益は、経常利益に特別利益(固定資産売却益など)を加え、特別損失(災害による損失など)差し引いた利益であり、税金を引く前の最終的な利益です。
経常利益+特別利益ー特別損失=税引前当期純利益
当期純利益は、税引前当期純利益から法人税、住民税及び事業税を差し引いた最終的な利益であり、株主にとって最も重要な利益です。
税引前当期純利益ー法人税、住民税及び事業税=当期純利益
損益計算書を読む際のポイントとしては、営業利益に着目してください。
営業利益を計算する際に、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を差し引いていますが、いずれも売上を得るのに必要なコストであり、営業損益を黒字化できないと、当期純損益を黒字化しても、その場しのぎにすぎません。
売上高ー売上原価ー販売費及び一般管理費=営業利益
本業で稼ぐ力があるかが重要です。
本業以外の活動で発生する営業外収益・営業外費用や、イレギュラーに発生する特別利益・特別損失を加える・差し引くと、その企業の本来の実力が見えにくくなります。
例えば、営業外収益・特別利益の発生により、本来の実力以上に稼いでいるように見えてしまいます。
他にも、営業外費用・特別損失の発生により、当期純損益が赤字になる企業があるかもしれませんが、本業で稼ぐ力がある限り、その赤字は一時的なものです。
貸借対照表では、企業の財政状態をスナップショットで把握することができます。
貸借対照表は、企業の「ある時点」での財政状態を示します。
左側には企業の持つ「資産」、右側には資金の調達源である「負債」と「純資産」が記載されています。
左右の合計は必ず一致します。
資産=負債+純資産
資産は、現預金、売掛金、土地、建物、機械設備など、企業が保有する経済的な価値のあるものです。
これらは、1年以内に現金化できる流動資産と、1年を超えて利用される固定資産に分けられます。
負債は、売掛金、借入金など、将来的に支払う義務のあるものです。
こちらも、1年以内に支払う必要のある流動負債と、返済期間が1年を超える固定負債に分けられます。
純資産は、株主からの出資金や過去の利益の蓄積(利益剰余金)など、返済義務のない自己資本です。
貸借対照表を読む際のポイントとしては、利益剰余金に着目してください。
利益剰余金は過去の利益の蓄積であり、利益を計上するたびに、蓄積されます。
毎年、損益計算書で当期純利益を計上するような企業は、貸借対照表の利益剰余金が積み上がっていきます。
自己資本の厚みが増すと、企業としての安定性が高まります。
キャッシュ・フロー計算書では、現金の流れを把握することができます。
キャッシュ・フロー計算書は、一定期間(通常は1年間)における現金の出入りを、その活動内容によって3つ(営業活動、投資活動、財務活動)に区分して表示します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、本業の営業活動による現金の収入と支出を示し、プラスであることが望ましいです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却など、投資活動による現金の収入と支出を示し、事業拡大期にはマイナスになることが多いです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の増減や株式の発行など、資金調達に関する現金の収入と支出を示します。
キャッシュ・フロー計算書を読む際のポイントとしては、フリー・キャッシュ・フローに着目してください。
フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたものであり、企業が自由に使える現金を示し、プラスであることが望ましいです。
営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー=フリー・キャッシュ・フロー
フリー・キャッシュ・フローがマイナスになる要因としては、本業の不調により営業活動によるキャッシュ・フローの収入が減少しているか、将来への投資により投資活動によるキャッシュ・フローの支出が増加しているか、が考えられます。
いずれにしても、フリー・キャッシュ・フローがマイナスの場合、現金の不足を防ぐために、資金調達により財務活動によるキャッシュ・フローの収入でカバーしているはずです。
財務諸表はトラックレコードであり、企業の過去と現在を映し出す鏡のようなものです。
企業の本質的価値はトラックレコード(過去と現在)に、将来性を加えて判断されます。
将来は誰にもわからないことから、企業の株価の適正価格を予測することとなり、投資家の心理によって、株価には波ができてしまいます。
しかし、そのような株式市場の投資家の気分ではなく、企業の本質的価値を見極めるベースとして財務諸表を使ってみてください。
ただ、個別株投資で企業の本質的価値を見極めようとすると、どうしても時間がかかってしまうため、個別株投資の前に、インデックス投資をおすすめします。

- 損益計算書では、営業利益に着目
- 貸借対照表では、利益剰余金に着目
- キャッシュ・フロー計算書では、フリー・キャッシュ・フローに着目